書評

要約:「儲かる物理」

概要

物理的な思考力を身につけることで、成長している企業とそうでない企業などの根底が見えてくる本

人生を変える思考力

人生の中で複雑な問題に出会うことが度々あります。

社会人の方であれば上司から無理難題を振られることもざらです。

そんな中で役立つのが物理的思考力です。

物理的思考力は次のようなものを指します。

物理的思考力の一例

  • 目の前で起きている現象を観察
  • 状況を変化させたり、違う状況を観察し共通の法則を見出し、必要ならば式で表現
  • 実験が不可能な場合は思考実験を行う(脳内シミュレーション)
  • 一般的な法則を示し、再度現象と照らし合わせて法則を検証

流れとして、力学や電磁気などの基本的な仕組みに触れつつ、純利益と資本の関係を物理と組み合わせて見ていきます。

お金があるところにお金が集まる理由

まず、等加速直線運動のグラフをみて見ます。

一度は見たことがあるとは思いますが、ここで重要なのはv-tグラフの面積が移動距離を示していることです。時間tがどんどん変化しても移動距離はグラフの面積から読み取ることができます。

お金の世界もグラフが有効

売上高と純利益の推移があります。(純利益=売上ー費用)

グラフの面積は純利益の合計です。純利益の合計は資本の増加を表します。

もしここで、企業の純利益がずっと横這いだったと仮定すると等速直線運動のグラフと同じになります。

これは言い換えると加速度が0という状況です。

純利益の伸びが0であっても(=加速度0)、純資産は増加します。

つまり、企業は着実に成長しています。もっと成長させたいのであれば、純利益は前年度より増加させる必要があります。

純利益の増加が一定であれば、純資産は二次関数的に増加します。

結論、純利益=収入ー支出が前年に比べて増加していれば、個人の純資産は時間tと共に急速に増加する

企業が成長する手段

純利益の増加率(加速度)が、企業の成長をもたらします。

どう言った方法が考えられるか。

  • 社員を増やして注力

社員を増やしても伸びないことはあります。これを運動方程式に当てはめてみます。

運動方程式:F=ma(F:力、m:質量、a:加速度)

Fを目標に到達するまでの一人の一人の働きの総和と捉え、aは純利益の増加率、mは物体の運動を邪魔する要因になります。

なぜ、mが邪魔する要因になるかというと、上記の運動方程式を変換すると、a=F/mとなることが分かり、加速度に対して反比例しているからです。

企業の成長を邪魔する要因は費用全般です。ただし、一番足を引っ張るのは成長にただ乗りする社員です。

社員の数が少なければ、誰がどの程度貢献したかが分かり易いですが、人が増えると目が行き届かなくなり、ただ乗り社員が増加し質量mが増えることになります。

社員の数が増えるとFは増加しますが、成長を妨げるmも増加することになります。

a=F/mの式を変形していくと、下記のようなグラフが得られます。

横軸はN(人数)

人数が増えていくにつれ、頭打ちになっていくのがわかります。

ここから分かることは究極、mを減らしてFを増加させればいいことになります。これはアウトソーシングなどが一つの手段として上がります。

まとめ

このような形で、物理を用いて現実の時間やお金という物事をグラフなどに置き換えることで理論による妥当性を示してくれます。

他にもエントロピーや化学的エネルギー(核反応)といったものを身近に存在するものと交えながら紹介しているので、読み物としても面白いです。